【第55話】遂にアイツが現れた!

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(これまでのあらすじ)

 

16歳で初体験を終えた矢吹。
初体験の相手の衝撃的な事実を知った矢吹は、付き合い始めてわずか1週間で彼女との結婚を決断した。
1年半後に訪れる高校卒業と同時に、荒れ果てた生まれ故郷を捨て、花の都“東京”へ彼女と駆け落ちをする計画を立てた。
この短期間で100万円を稼ごうと、矢吹の選んだ道は『パチンコ』。
極秘テクニックの実践で、いきなり月に50万以上を荒稼ぎすることに成功。
その後、失敗と挫折を繰り返すことになるが、なんとか安定的に収益を上げることができるようになった。
「よし、これで駆け落ちはなんとかなる!」
そう思った矢吹は、残りの高校生活で、彼女との同棲をスタートさせる。
このまま幸せな高校生活をエンジョイして、一気に彼女と駆け落ちできると思った矢吹だった。
ところがある日の深夜、別のクラスのヤンキー3名に呼び出され激しく暴行を受けてしまう。
幸せな同棲生活は、一気に暗澹(あんたん)になってしまったのだった。
この問題は電話番号を変えることで一時的に治めたのだが、
次になんと、この地域No.1の不良「ケント」の子分である中学生の本田が週末に単車を貸せと言って絡んできた。
週末になると繰り返されるこの出来事に、遂に矢吹の堪忍袋の尾が切れた。
「ケントでも誰でも呼んで来い!シバいたる!!」
慌てふためき立ち去った本田だったのだが…

 

続きをどうぞ。

 

~~~~~~~

 

本田を怒鳴りつけた土曜の夜から、数日が過ぎていた。

 

 

覚悟はしていたが、遂にその日がやってきた。

 

 

奴が来たのだ。奴が…。

 

 

 

「ケント」

 

 

 

張本人が、遂に僕の家までやってきたのだ。

 

 

と言っても、ケント本人が、直接、僕の部屋まで来たのではなく、また、例の如く本田が僕のところへやってきた。

 

 

窓ガラスは先日の事件で割れたままだったので、窓越しに声を掛けてきた。

 

 

 

本田:「おい、矢吹…。ケント君が呼びよるぞ…。」

 

 

 

時間は、こいつらにしては早くて、確か21時前後だったと思う。

 

 

このとき、彼女はまだ僕のところには来ていなかった。

 

 

僕は、案外冷静だった。

 

 

多分、ケントが来ることは分かっていたし、子分からの報告で、僕をボコボコにクラし(殴り)に来ることぐらい分かっていた。

 

 

「ビビッてても仕方がない。来るなら来い!」と、僕は腹を括っていた。

 

 

ケントとは、まともにタイマン張っても勝ち目はゼロなことは分かっていたので、「最初っから謝って、ボコボコにやられよう」そんな気持ちで居たのだった。
※情けない話ですが、ホントにそんな気持ちでした。

 

 

しかし、ムカつくのは、本田のガキんちょだ!

 

 

あれだけビビッて退散した本田が、いきなり僕を呼び捨てにして声を掛けてきやがった。

 

 

僕がブチ切れたことで、あれだけ怯えながら去って行ったにも関わらず、ケント登場でいきなり強気の態度なわけだ。

 

 

どうせ僕はケントにやられるんだから、その前に、先にコイツをシバいたろうかと思った。^^;;
※まあ、ここは100歩譲って、中学生相手にキレてしまった僕も情けないわけですけどね…^^;;

 

 

半分開き直り掛けていたのだが、現実を見ると、実はまだツネ達から暴行を受けた傷は完全に治ってなくて、体のあちこちはまだまだ青アザが残ったままだった。

 

 

 

矢吹:(「ようやく1ヶ月前にツネ達から受けた暴行の傷が癒えてきたというのに、また振り出しに戻るのか…」)

 

 

 

部屋の鏡に映し出された自分の顔を見ながら、僕は肩を落とした。

 

 

覚悟は決めていたとは言え、やはり一方的に殴られるのは嫌なものだ。

 

 

とは言っても、相手は「ケント」だ。

 

 

どう考えても、僕には勝ち目はなかった。

 

 

しかし、不思議なものだ。

 

 

ツネ達にはどんな手を使ってでも、やり返してやろう!という気持ちが芽生えていたのに対し、ケントには最初っから白旗状態なわけだ。

 

 

それは、単なる脱力感だけではなく、僕の中でケントに対する憧れにも似た不思議が感情が混入していたように思う。

 

 

心の整理が付いた僕は、本田に言った。

 

 

 

矢吹:「すぐそっちに行く」

 

 

 

そして僕は、無防備で外に出た。

 

 

そこには、本物の「ケント」が立っていた。

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こんな時になんて神経しているんだと思われるかもしれないが、僕は暗闇にうっすらと見えるケントの姿がカッコいいと思った。

 

 

しかし、こんな心と裏腹に鼓動は激しく脈打っていた。

 

 

 

矢吹:「ドクン、ドクン、ドクン、ドクン・・・」

 

 

 

ケント:「久しぶりやの…」

 

 

 

そう、僕は幼少時代に、何度かケントと遊んだことがあった。

 

 

薄っすらとした記憶しかないのだが、小さな公園で “かくれんぼう” を友達と一緒にしていてその中にケントが居た。

 

 

確か、小学2、3年の頃だったと思う。

 

 

ケントは色が黒く、その頃はちっちゃくて、あまり目立たない子だったが、動きが機敏で、一際目が鋭い子だったので、僕の記憶から消えることはなかった。

 

 

驚いたのは、ケントが僕のことを覚えてくれていることだった。

 

 

僕は小さな頃から人懐っこく、人見知りをしない。

 

 

ケントとは対照的に、誰とでも陽気に明るく触れ合う子だった。

 

 

ケントから僕はどう映っていたのかは分からないが、まさかケントが僕と遊んだことを覚えていたとは意外だった。

 

 

 

矢吹:「ほんと、、久しぶり。。」
「す、凄い変わりようやね…」

 

 

 

僕は、緊張のあまり言葉を詰まらせてしまった。

 

 

ケントは、僕の方をさっと見て、

 

 

 

ケント:「向こう行こっか…」

 

 

 

と言って、首を振って広場の方へ行くように僕に示唆(しさ)した。

 

 

ケントの周りには、本田の他、2人ほどの子分が付いてきていた。

 

 

この子達は、ケントが意図的に連れてきたのではなく、僕がズタボロになる様(さま)見たさに勝手に付いてきた子達であることは、なんとなく想像ができた。

 

 

夜道を不気味に歩く、ケントと僕、そして子分3人…。

 

 

まだ午後10時前だというのに、辺りはシーンと静まり返ってきた。

 

 

僕は、広場まで連れて行かされ、そこでボコボコにされるものだとばかり思っていたのだが、先頭を歩いていたケントは、広場手前の舗装された小道を右へ曲がった。

 

 

その先は行き止まりであったが、その行き止まりの直ぐ上は大きな溜め池があって、溜め池の周りには無数のお墓が池の周囲を取り囲んでいた。

 

 

 

矢吹:(「おい、まさかオレを池に突き落とそうっていうのか?」)

 

 

 

だから、こいつら(子分3人)を連れて来たのか!!??

 

 

僕は、背筋が凍り付くような感覚に襲われていた。

 

 

 

「ドクン、ドクン、ドクン・・・」

 

 

から

 

 

「バコン、バコン、バコン・・・」

 

 

 

と、心臓の音は変化していた。

 

 

逃げようにも、僕の前にはケントが居て、後ろには子分3人が付いてきている。

 

 

おまけにこの小道は、右側が小高い丘になっており、左側は古い住宅が密集して立ち並んでいるため、完全に逃げ道は塞がれた格好となっていた。

 

 

真っ直ぐ歩き続け、行き止まりに着いたところで、先頭を行くケントの足がピタッと止まった。

 

 

そして、ゆっくりと僕の方を振り返り、ケントは僕を直視した。

 

 

 

矢吹:(「ここで、いきなり殴ってくるのか?」)

 

 

 

ふと周囲を見ると、四方を囲まれ、辺りは静まり返っており、一気にヤルには最高のシチュエーションになっていた。

 

 

行き止まりとなった右側の角には、今にも切れそうな街灯があって、細々と淡く僕たちを照らしていた。

 

 

無言のケントが目の前にいる…。

 

 

殴ってくるのか?それとも、蹴りを入れて来るのか?

 

 

ケントの一挙手一投足に、僕は息を飲んだ…。

 

 

 

(つづく)

 

gaitou3

 

 

追伸:
ケントはどう出るのか?
また、ケントの驚くその後についても、次回お伝えします。
ご期待ください。

 

 

 

 

今日も最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。
それではまた。

 

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