【第31話】灯火になった小さな夢

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落ちた。

いや、完全に堕ちて行った…。

 

人間という生き物は、本当に現金である。

調子の良い時と、悪い時とでは、全くの別人と化してしまう。

僕とヨシノリも例外ではなかった。

「ミラクルシューター」事件から、職を失った労働者のようになった僕達は、完全に行き場を失ってしまっていた。

ヨシノリと相談し、行橋の地元を離れて小倉のパチンコ屋を片っ端から周り、「ミラクルシューター」を設置しているホールを探し回ろうということになった。

行橋から小倉までは、30kmはある。

原チャリで遠征するには厳しい距離ではあるが、ヨシノリと僕は学ランの上にドカジャンを羽織り、金を求めてスロットルを全開にした。

季節は既に秋に差し掛かっており、原チャリといえども寒さが身に沁みる季節になっていた。

30km先の小倉に到着。

学校が終わってからの遠征なので、既に周囲は暗くなっていたことを今でも覚えている。

小倉にあるパチンコ屋のネオンを目印に、とにかく「ミラクルシューター」を求めて梯子した。

 

しかし、僕らは現状に愕然としたのだった。

小倉にあるパチンコ屋を片っ端から梯子したのだが、「ビッグシューター」はあるものの、「ミラクルシューター」を設置しているところは、一軒も無かった。

それどころか、驚いたのは、羽根モノ台そのものの存在が薄く、ほとんどのパチンコ屋はセブン機とスロットで埋め尽くされていた。

しかも、ギャンブル性の高いセブン機やスロットは、その出玉も凄まじかった。

足元に何十箱も、玉のドル箱を積み上げているオッサン達が、くわえタバコで斜に構えてパチンコを打っている光景は、なんとも小倉の街を表現していた。

ヨシノリと僕はこの光景に面食らったが、すぐさま黙って二人してセブン機を打ち始めた。

これで勝てるのなら、問屋は要らない。

当たり前だが、二人とも一瞬で軍資金が底をついたのだった。

完全に血が昇った僕らは、ポケットがスッカラカンの状態で、小倉の街をアテもなく歩き始めた。

当時の小倉駅付近は、薄暗く街灯もほとんどない場所はあちこちにあり、駅の南口から北口へ抜ける高架下は、なんとも言えないブラックな雰囲気を醸し出しており、タバコやシンナーを吹いている不良達がたむろしていた。

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ヨシノリと僕は、この雰囲気に飲まれまいと、ポケットに手をツッコミ睨みを効かせて闊歩した。

 

しばらく歩いていると、前方に大学生らしき若者が歩いていた。

ヨシノリと僕は、目を合わせ、互いに小さく頭を縦に振った。

大学生の後ろをピタリとマークする僕達。

目的は、”カツアゲ” だった。

「おい!」

最初に声を掛けたのは、僕だ。

「止まれ!!」

すかさず、声を掛けるヨリノリ。

足早に立ち去ろうとする大学生。

「おい、こら、止まれや!!」

その瞬間、大学生は走って逃げた。

その後を追い掛けようとは、ヨシノリも僕も思わなかった。

内心、僕達はホッとしていた…。

こんな行為は、僕らのポリシーに完全に反していたからだ。

虚しさだけが僕の心に突き刺さり、この先のことなんて、もうどうでもよくなって来ていた。

「どうせ、何をやってもオレは失敗するんだ…」

完全に自信を無くし、未来への希望も失せてしまっていた。

自分が何を求め、これからどうしてよいのかもわからなくなっていた。

秋の夜空の肌寒さが嫌いになったのは、どうもこの頃からのように思う。

ガックリと肩を落とし、残り僅かなガソリンがガス欠にならないようにと、おそるおそる帰路に着くヨシノリと僕だった…。

夢は、消え掛けたロウソクの灯火のようになっていた…。

(つづく)

rojiura

 

追伸:
この頃の僕は、完全に人間のクズだ。
僕は、この時の記憶が30年経った今でも消えない。
出来れば、この時の大学生を探して懺悔して謝りたい。
そして、できればこの記憶をこの頭から消し去りたい。
この苦い経験は、今でも消えることなく鮮明に脳裏に焼き付いている。
やっぱり真面目に生きないと人間はダメだ。
※ただ、僕は同じような過ちをこの後にもう1度だけ犯してしまうことになる。

 

今日も最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。
それではまた。

 

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