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(これまでのあらすじ)
16歳で初体験を終えた矢吹。
初体験の相手の衝撃的な事実を知った矢吹は、付き合い始めてわずか1週間で彼女との結婚を決断。
1年半後に訪れる高校卒業と同時に、荒れ果てた生まれ故郷を捨て、花の都 “東京” へ彼女と駆け落ちをする計画を立てた。
この短期間で100万円を稼ごうと、矢吹の選んだ道は「パチンコ」。
極秘テクニックの実践で、いきなり月に50万以上も荒稼ぎすることに成功。
しかし、その後に訪れる挫折。
全財産を無くし、路頭に迷う矢吹の前に訪れた一人の男「高橋」。
高橋は、矢吹のようなインチキ戦法でのパチンカーではなく、生粋の”パチプロ”だったのだ。
ショックを受けた矢吹は、一つの決断をする。
~~~~~~~
ギャンブラー高橋に、僕は弟子入りを志願することにした。
基礎からパチンコに勝てる方法を学びたかった。
深々と頭を下げてお願いをしたところ、あっさりOK。
僕が他人に頭を下げることを誰より嫌うこと位、僕と同じクラスの連中ならみんな知っていると思う。
高橋は驚くことなく、僕の弟子入りを迎え入れてくれた。
弟子入りしたこの日は、高橋の自宅へ招待された。
まずは、高橋家を知って欲しいというのだ。
ここで、高橋一族がギャンブル一家であることを知ることになるのだった。
前回同様に、原チャリで50km掛けて、高橋の自宅がある中津へと向かった。
季節は11月頃だったと思う。
寒さが身に沁みる季節となっていたが、僕には時間がなかったので、徹夜してでも何でも盗み取ろうと思っていた。
高橋宅へ到着。
自宅へ案内された。
矢吹:「お邪魔しま~す」
一応、声を掛けて自宅に上がったが、どうやら誰も居ない様子。
そうそう、高橋の家は、外観は普通の家だった。
どこにでもありそうな平凡な家。普通の家庭を想像させた。
ところが、自宅の中へ入ると、この家族が普通ではないことが直ぐにわかった。
玄関の真正面に、馬の頭の剥製があった。
家の中に上がり、居間に案内された。
そこで全てが分かったのだ。
居間のテーブルの上には、競馬新聞が大きく開かれ、赤いマジックであちこちに印が付けられていた。
また、ギャンブル系の色んな雑誌があちこちの散在しており、家族みんながギャンブルが好きなことが伺えた。
高橋:「立ってないで、座り~」
矢吹:「お、おう..」
そして、高橋は大きな画用紙を取り出し、高橋家の家系図を書き始めた。
高橋:「親父は、ずっとギャンブルで生計を立ててる…」
「お袋はパチンコ。」
「親父もスロットを打つけど、基本は週末の競馬や競輪がメインなんよ…」
矢吹:「そ、そうなんだ…」
高橋:「この家は親父が、競馬で勝った金で買ったんだ…」
矢吹:「ま、マジで!!」
生まれてからずっと町営住宅に住んでいた僕には、
この事実を真正面から受け止めることができなかった。
高橋:「今日は親父もお袋も、昨日のパチンコ屋におるよ。」
「実は昨日も僕の近くでお袋は打っていたんだけどね…」
矢吹:「高橋って兄弟もおったよね?」
高橋:「兄が1人ね。東京でパチプロやってるよ。」
この瞬間に、高橋家は生粋のギャンブル一族であることはわかったのだ。
どうやら、高橋家は、働くことを一切していないようだ。
高橋自身も、きっと進学も就職もしないんだろう。
そういえば、高橋は見た目は知的そうだが、クラスでの成績はいつも最下位であり、
ある時なんかは、解答用紙を白紙で提出していた。
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僕は「なんだコイツ」って最初は思っていたのだが、
今日、この謎が紐解けたのだった。
そして、次に高橋は、別の画用紙を出して、
ここで、何やら数字を書き始めた。
① 34回/1,000円(=250発)
② 確率:250分の1
③ 大当たり一回の出玉:3000発(=7500円換金(100円/40発)
④ 投資額:7350円
僕には、何のことだかさっぱりわからなかった。
上記を書き終えた高橋が、ゆっくりと口を開いた。
高橋:「この台の場合、ホール側が意図的に操作していない限り、
1,000円で34回スタートに入る機種を打てば確率論ではプラスになるんだ。」
矢吹:「・・・」
高橋:「パチンコをギャンブルと考えてはいけない。」
「パチンコに限らず競馬や競輪もすべて確率論から成り立っている。」
「つまり、データを分析すれば、何に投資をすればプラスで回収できるのかは、
データが揃っていれば分析可能だ。」
矢吹:「・・・」
高橋:「ここで書いた数字は、一般的なセブン機を例に挙げた。」
「先日の一発台も、実は確率論に基づいて打っていたんだ。」
僕は、なかなかこのことを理解するのに時間が掛かったが、
何度も数字を見ているうちになんとなく、高橋が言わんとしていることが分かってきた。
簡単に要約すると、
“1回の大当たりで得れる金額は約7,500円。
つまり投資金額を7,500円未満で1回大当たりすれば投資額は回収可能”
という論理なわけだ。
僕はずっと黙って、高橋師匠の話に全身全霊を傾け集中した。
今日の授業で学んだことは、
・費用対効果を見極め、いくら投資すれば回収できるんかを理解すること。
・釘が読めるようになり、1,000円あたりスタートチャッカーに入る回数を意識すること。
だった。
このための秘策ツールとして、高橋師匠は、次のものを買うように勧めてくれた。
それは、
「来店客数カウンター」
これを常にポケットに入れ、ポッケに手を突っ込んで、
1,000円あたり何回スタートに入るのかをカウントしろと言うのだ。
そして、もう一つのアドバイスは、
「新装開店のみを狙え!」
ということだった。
どこのパチンコ屋も、新装開店は夕方から行われていた。
しかも、開店時間はほんの2時間程度。
つまり、この時だけは、パチンコ屋は赤字覚悟で釘を緩めてくれるのだ。
この日の話は、この2点だった。
「釘」 と 「新装開店」
このことを頭に叩き込んで、原チャリに乗ってエンジン全開で僕は帰路に着くのであった。
(つづく)
追伸:
“努力なくして金を稼ぐことは100%できない。”
このことを、僕は高校二年の時に高橋から教わりました。
今頃、もっとガンガン稼いでいるんだろうな~。
高橋は。
もう日本には居ないかも…ですね。^^;;
今日も最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。
それではまた。
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