【第53話】白い特攻服の男

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(これまでのあらすじ)

16歳で初体験を終えた矢吹。
初体験の相手の衝撃的な事実を知った矢吹は、付き合い始めてわずか1週間で彼女との結婚を決断した。
1年半後に訪れる高校卒業と同時に、荒れ果てた生まれ故郷を捨て、花の都“東京”へ彼女と駆け落ちをする計画を立てた。
この短期間で100万円を稼ごうと、矢吹の選んだ道は『パチンコ』。
極秘テクニックの実践で、いきなり月に50万以上を荒稼ぎすることに成功。
その後、失敗と挫折を繰り返すことになるが、なんとか安定的に収益を上げることができるようになった。
「よし、これで駆け落ちはなんとかなる!」
そう思った矢吹は、残りの高校生活で、彼女との同棲をスタートさせる。
このまま幸せな高校生活をエンジョイして、一気に彼女と駆け落ちできると思った矢吹だった。
ところがある日の深夜、別のクラスのヤンキー3名に呼び出され激しく暴行される。
幸せな同棲生活は、一気に暗澹(あんたん)になってしまったのだった。
これ以上、呼び出しを受けないようにと、電話番号を変えたのだ。
これで、なんとか以前の平和の夜を、取り戻せたはずだったのだが…

続きをどうぞ。

 

~~~~~~~

 

土曜の深夜の電話は鳴り止んだ。

 

また、いつもの平和な週末がやってきたように思えた。

 

そんな数週間を迎えたある日の夜のこと…

 

 

「コンコン、コンコン…」

 

 

同棲中の “離れの部屋” にある台所上の窓を誰かがノックしている。

 

 

「コンコン、コンコン…」

 

 

この窓は、彼女と僕が寝ているベットから一番離れた位置にあるため、ノックの音は普通に起きてても気づきにくいのだが、たまに婆ちゃんが食べ物の差し入れをしてくれている唯一の窓にもなっていた。
※婆ちゃんは、彼女と僕が高校2年から同棲していることを知っていたんです..*^^*
あ、この “離れの部屋” を提供してくれたのは、婆ちゃんですからね。
ホントに優しいお婆ちゃんでした。
婆ちゃんと彼女は大の仲良しでした。^_^

 

時間は、深夜0時を回っていたと思う。

 

彼女と僕は、完全に深い眠りに付いていたのだが、この音にいち早く気付いたのは彼女の方だった。

 

 

彼女:「ねぇ、、ねぇってば…」

 

矢吹:「…ん..んん~….どうしたん?」

 

 

寝ぼけて返事をした僕だったが、彼女の険しい顔にボケていた脳のピントはすぐに合った。

 

 

矢吹:「ん?なんか音がしよるね!?
台所の窓か…。
ここは、婆ちゃんしかノックしないはずだけど、
こんな時間に、まさか婆ちゃんは起きてないやろぉ…」

 

 

僕は彼女を布団の中に潜り込ませて体ごと隠し、忍び足で台所の窓の方へと向かった。

 

そして、小さな声で、

 

 

矢吹:「誰?…」

 

 

と聞いた。

 

すると、窓の向こう側から若い男が小声で返答してきた。

 

 

若い男:「ちょっとケント君(仮称)が、お前のバイク貸してくれっちいいよぉーぞ…」

 

 

矢吹:(「ケ、ケント!?」)

 

 

僕はまたもや、鼓動が大きくなり、心臓を打つスピードが一気に加速した。

 

ケントと言えば、この辺りでは知らない者はいない。

 

喧嘩がめっぽう強く、負けたことが一度もないという男だ。

 

真っ白な特攻服が良く似合っており、田川・行橋・苅田・小倉一帯で、知らない者は、誰一人としていなかった。

 

滅多に単車に乗ることはなかったのだが、たまに国道10号線を流すことがあり、僕も一度だけケントが単車を転がしている姿を見たことがあった。

 

いや、そりゃ、もうカッコいいのなんのって…。

 

シビレましたよ。

 

真っ白に全塗装されたCBRに、高めにライトアップされた丸目のヘッドライト。
※CBRのノーマルライトは角目です。

 

先っちょに、小さめの風防が組み込まれており、これがまたシブかったんですよ。

 

遠くから鳴り響く直管の図太いマフラーの音。

 

普通の暴走族は、必要以上に何度もアクセルを空回しして、爆音で自己顕示を繰り返すのですが、ケントは一貫してフルスロットで、直管のマフラーの音をアスファルトに地響きさせながら、国道10号線を真っ直ぐゆっくりと制限速度内で走っていました。

 

制限速度内と言っても、スタイルは、特攻服にノーヘルなわけです。

 

警察や一般車、他の族も一切寄せ付けないといった、なんとも言えない風貌を漂わせていました。

 

僕は苅田港入口付近の四つ角にあるセブンイレブンに自分の単車を停車させて、その様子を見ていたのですが、ケントが走りすぎるときにチラッと「BEET」のサイドカバー(これも白く塗装)が、やたらと決まっていたという記憶があります。

 

ケントは、決して群れで走ることはなく、いつも単独で夜の国道を流していたようですが、この付近の族は全員ケントに一目置いていましたからね。

 

すべてが許された男だったのです。

 

しかも、見た目は長身かつスマートであり、運動能力抜群、おまけに超イケメン。

 

マジで、一切文句の付けようのない存在でした。

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そんなケントでしたが、実はケントは小さな頃から武道を嗜(たしな)み、小中学校では剣道が強いことでも知られていました。

 

普通に考えれば、そのまま高校も推薦で行けていたはずですが、家庭環境が複雑で高校には進学せずに非行の道へと進んでしまったわけです。

 

また、ケントは幼少時代、体が弱く発育が遅れたために、学校への入学が1年遅かったらしく、学年は僕よりも1つ下だったのですが、年齢は実は僕と同じ歳だったという噂も飛び交っていた。
※真実は結局分からないままです…。

 

ケントに関しては、この後に驚きの進化を遂げますが、ここではケント話はこの程度にしておきます。

 

この先も一度だけ僕との “タイマン” シーンがあり、そこで登場してくるので注目しておいてくださいね。

 

このノンフィクション恋愛小説の舞台は苅田町という人口3万人ちょっとの町で、あのサッカー日本代表の『大久保嘉人』さんの故郷ということで有名になっていますが、実は僕らの中では『ケント』こそがカリスマだったのです。

 

次回、ケント当人が登場するまで、この話の続きは待っていてください。

 

 

 

では、話を元に戻します…。

 

 

矢吹:(「ケントがなぜオレに・・・」)

 

 

そう思ったのだが、ケントからの依頼となると断るわけには行かない。

 

台所上の窓をそっと空けると、そこに立っていたのは、中学生の本田だった。

 

本田は、うちの町営住宅の裏に住む子で、ここの両親は二人とも中学校の教師だった。

 

本田には年子で弟がいたが、近頃は二人ともめっきり見かけることが無くなっていた。

 

まさか、夫婦共に中学校教師の子である本田がグレるわけはないだろうと思っていたのだが、僕と同様に町営住宅の裏側に “離れの小部屋” が与えられ、そこに、いつからか茶髪の中学生数名が出入りし始めるようになっており、小部屋の小窓からはいつもタバコの煙がモクモクと上がっていた。

 

この付近一帯は、それほどまでに治安が悪かったのだ。

 

誰でも悪(ワル)の道に染まりそうな雰囲気がプンプンしていた。

 

本当にマジメな子は、両親が引っ越しを決意し、別の地区で暮らし始めることでも知られていたほどだ。

 

 

矢吹:「で、どの単車を貸して欲しいち、ケントは言いよんか?おぉ~!?」

 

 

流石に、中学生に動じるわけには行かない。

 

僕は強気の姿勢で問い質(ただ)した。

 

実は、当時僕はバイクを4台所有していたのだ。
※パチンコ・バブルの時に、買いまくっていたんです…^^;;
1台は、先輩んちに置いてもらっていました。
そういやどうなったのかな、、黄色いカスタム・シャリー..(-_-;;

 

 

本田(兄):「ギヤ付きの黒いやつ..」

 

 

言葉短めに、中学生の本田が言った。

 

僕は、少し躊躇(ためら)ったが、ドアの横のフックに掛けていた、SUZUKIの黒のRGの鍵を取り、サッと本田に渡した。

 

 

矢吹:「ほら、静かにそっ出せ!ガソリンは満タンにして返せよ!」

 

 

と言って、単車のキーを本田に渡した。

 

本田は、ニタニタしながら、「わかった」と一言だけ言って、その場から姿を消した。

 

すぐに表側の庭から、僕の黒のRGが外に運び出された。

 

僕はそっと “離れの部屋” の窓越しの締まったカーテンの隙間から、本田達が単車を外へ運び出すところをじっと見ていた。

 

3、4人は仲間が居るようだった。

 

彼女は、この一部始終を、ずっと布団の中から聞いていたことだろう。

 

 

彼女:「何なん?」

 

 

って一言だけ言った。

 

 

矢吹:「な、何でもないよ..。昔からの知り合い..」

 

 

それだけ言って、僕は布団に潜り込んだ。

 

言葉を詰まらせた僕のことを、この時、彼女はどんな想いで見ていたのだろう?

 

 



 

 

明くる朝、窓から外を見ると、僕の黒のRGは鍵が付いたまま、戻ってきていた。

 

どこの夜の街を走ってきたのだろう…。

 

なんだか、僕には、黒のRGがとても疲れているように見えた。

 

僕は、なんとも言えない複雑な気持ちでいた。

 

タンクの中を覗くと、ガソリンが半分位、入っていた。

 

 

タンクの穴から揺ら揺らと見えるガソリンを見ながら、僕は不吉な予感を感じていた…。

 

 

(つづく)

 

white_bike

(写真と本文は一切関係ありません)

 

追伸:
はぁ~~、今でも溜息しか出ません…。
この頃の僕は、週末が来るのが憂鬱でしたよ。
ずっと単車を貸していましたからね。
僕もソコソコ単車乗っていたんですが、彼女との同棲生活をスタートさせてからは、ほとんど乗らなくなっていましたからね。
バイクを盗んで捕まるよりも、知り合いの乗らない単車を借りる方がイイに決まっていますよね…。
次回は、遂に僕がキレマス…。

 

 

 

今日も最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。
それではまた。

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