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ウキウキワクワクする理由がココにある(UWARIYU)

【短編小説】目の前の焼き鳥に告ぐ。俺は自己確立できているのか?人生の意味を教えてくれ…

      2016/11/08

この記事は約 11 分で読めます。

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今夜はまだ火曜日。いつもの店で焼き鳥を頼んだが、俺は急に不安になった。

「オイ、目の前にいる焼き鳥、おまえに聞きたい。人生の意味っていったい何だ?」

俺は自己の確立なんかできていない気がする...。気づいたら終電を過ぎていた。。orz

 

焼き鳥にくだを巻いてどうする?俺。でも、それくらい大事な “男としての” 自己確立

今日はまだ火曜日。

俺は残業後に、一人で会社近くにある11席しかない小さな飲み屋にいる。

 

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裸電球で照らされる薄暗い店内に時々響く、客からの注文によって美味しそうに調理される焼き鳥のジュウジュウいう音と小さな飲み屋には似合わないジャズの奏で。

このアンバランスなバランスが俺の密かなお気に入りだったりする。

今日は芋焼酎をロックで、もう4杯飲んでいた。

明日はノー残業デーで早帰りが建前では約束されているも、それは明日、上司の風前の灯火(ともしび)のバーコード頭の決まり具合で左右されるのはわかっている。

ああそうだ、わかっているというよりも、“最初から諦めている” んだ。

サラリーマンというのは時間に拘束されている。

俺の小さい頃、親父は朝早く会社に出かけるのはなんとなく覚えていたが、帰りは何時に帰ってきたかなんて、当時は全くわからなかった。

休みの日だけ帰ってくる「大きいオトナ」くらいに3歳頃は認識していたようで、お袋から「アンタはお父さんに、“パパ、また遊びにきてね” って何回も言ってたんだからね」と大きくなってから散々言われたものだ。

俺は、親父にそんなことを言った記憶はない。

でもお袋が何度も言うから、俺だって本当に言ったのかもしれないと少しは信じてしまう。

 

でも、そんな親父ももう5年前に亡くなった。

 

最早伝説と化している今から25年以上前のバブルの頃は俺もすでに社会人にはなっていたが、就職先は地方だったから“新入社員のボーナスが入った給料袋が立つ”なんてことは起こるはずもなく、ごくごく地味な、昔ながらの縁故で公官庁と取引をすることで売り上げをあげる会社に勤めていた。

その後、結婚を機に転職をした。

両親のことは気にはなったが、転職先が東京だったため、年に1回とか2回、会えればいい方だった。

今となっては、なぜもっと親父と話さなかったのか、悔やんでも悔やみきれない。

 

そういえば、この飲み屋のトイレには、どこぞの居酒屋チェーンで始めた習慣なのか、そこと同じ標語が貼っている。

 

「親の小言と冷酒は後になって効く」

 

だったかな。

確かにそうかもしれないが、両親の記憶が遠くなるとふたりが仲良かったイメージしか思い出せず、小言と言っても、お袋の「親父にまた遊びに来てねと言った」ことしかハッキリ覚えていないではないか。

親父が亡くなる前の年に、転勤で故郷であるここ福岡に戻っては来れた。

でも、あっという間に親父はあちらの世界へ旅立ってしまった。

それ以来、一人暮らしをしていたお袋は去年、大腿骨の骨折から長期入院をして、地元を担当するケアマネージャーに無理を言って頼み、今はリハビリ専門病院に滞在してもらっている。

ボケてこないか心配だが、仕事が忙しくて平日は会いに行けない。

ましてや自宅での介護も諸事情によりできないのが本当に申し訳ない。

 

あと数年で50になる俺には、一応家庭がある。

 

でも、俺の両親のような仲の良い関係はどこへやら、今は自宅に帰っても女房と会話すらない。

だからお袋の介護を女房に任せることなんでできやしない。

俺には妹がいるが、長男の嫁を遠い離島でやってるから、頼むことはできない。

恋愛結婚したはずだったのに、今や世間で言うところのセッ〇スレス夫婦とはうちの家庭のためにあるような単語だ。

子どもは一人いるが、反抗期で何を言っても親父の言うことなど聞く耳を持たない。

 

オイ、息子よ、俺がおまえと同じ年だった頃はもっと素直に親父の話を聞いていたぞ、と俺は言いたい。

 

が、言えない...。

俺は男としての自分、自己の存在をこの先どうしたらいいのか。

自分の存在意義を確立するには何をしたらいいのか、何を辞めた方がいいのか。

人生の意味を知らないと、俺も親父のようにいつか、気づいたら死んでしまうのか。

 

オイ、目の前の焼き鳥、おまえも少しは真剣に考えてくれ。。

 

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“卒業” はアイドルもいいが、企業戦士だって同じなんだよ

俺は中学の頃から、好きなアイドルは決まってかなり年上だったから、イマドキのかわいらしさ(※推定)で人気のアイドルたちにはあまり興味がない。

でも時々 “卒業” と称して、グループに所属していたアイドルが、まあ、脱退してソロ活動を始めるだけなのだが、あれが妙に羨ましい。

企業戦士だって同じなんだよ。

俺だってできることなら、今の生活から “卒業” したいと何度も思ったことかわかんないね。

 

おっと、店のオヤジが出してくれた焼き鳥が冷めてきたかもしれないな。

 

焼き鳥のおまえにくだを巻いて悪かったな、お詫びに俺がちゃんと食べてやるよ・・・って、おまえが女なら、俺はアホなくらいにただのエロオヤジじゃないか...。

 

その時、飲み屋が急に停電になった。

 

前にも停電になることがこの店ではあったし、その時は電気を使いすぎてブレーカーが飛んだのが原因だったのも覚えていたから、俺は驚かなかった。オヤジ、まだ20アンペアで頑張ってるのか?

 

店のオヤジが店内にいる客に声をかけながら、ブレーカーのところに歩いていくようだ。

そして、やはり原因は電気の使い過ぎだったようで、使いかけの電子レンジの電源を落としてブレーカーを入れたら、また電気が点いた。

 

と、その時、俺は隣に気配を感じた。

 

若い女
あの・・・すみません、ここに座っててもいいですか?


 

右側を見れば、ビールケースを逆さにして2個積み上げて、そのてっぺんに小さな座布団を乗せた粗末な席に、ちょこんと若い女が座っているのが視界に飛び込んで来た。

 

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若い女
さっきの停電でびっくりして、私、暗いのが苦手で席を移動しようと思って・・・でも空いているのここしかなくて・・・驚かせちゃったみたいでごめんなさい


 

俺は驚いたが、店内を見回すと確かに一番奥の席だけが空いていて、もう空いている席はもうなかった。女は一番奥の席からこちらに移ってきたようだった。

 

オレ
いや・・・構わないけど、君、一人でこの店に?


 

若い女
あ、はい、普段は飲まないんですけど、友達からここのお店が美味しいって聞いて、初めて来てみたんです。でも、一緒に来るはずの友達がお仕事で来れなくなって、それで私だけで


 

その女は、20代にも見えるような若い雰囲気ではあったが、深紅のカーディガンの裾から出る華奢な白い腕と黒髪がキレイで、なんとなく大人の色気を漂わせる雰囲気があった。

 

酔いのまわるおぼろげな視界と動きの鈍くなった頭の認識で、俺の右側になぜか天使がいるように思えてきた。

そんなバカげた発想も、“酔っぱらっているからだろう” とスグに思い直すも、せっかくの機会だし、もう二度と会うこともないだろうと思って、俺はその女と会話を楽しむことにした。

 

自らに問え、己の存在価値がすでにあることを。確立すべき思考は “すべては自分で選択する” のが本当の人生の意味である

その女は名前をノリコと言った。

偶然にも俺の女房と同じ名前ではないか。

しかし、そんなことは今はどうでもいいし、目の前のこの人に言う必要はない。

 

オレ
ノリコさんって言うんだね、若いのに“子”がつくなんて珍しいよね


 

若い女
はい、昔からよくそう言われてきました・・・


 

カラカラとロックの氷をまわしながら、その女は答えるのだった。

決して親密にならないように、会話内容は注意深く選んで。

 

オレ
でも、いい名前じゃん


 

若い女
う~ん・・・小さい頃はイヤで名前変えたいと思ってました。ほら・・・源氏名って言うんですか?あんなのでもいいから欲しかったですよ


 

オレ
ははは、そりゃ上品な君の口から出る言葉じゃないかもしれないね


 

薄暗い飲み屋でもわかるくらいに赤くなった顔で、さっきまでうつむき加減だったその女は、俺の方を向いて反論してきた。

 

若い女
だって、自分の名前って自分で選べないじゃないですか?


 

オレ
確かに、・・・親がつけてくれるものだよね


 

若い女
だから、大人になってから思ったんです


 

オレ
何を?どんなことを?


 

若い女
名前は選べなかったけど、それ以外の人生の選択肢は自分で全部選ぼうって・・・


 

オレ
・・・若いのにエライね


 

若い女
だから、今日も友達は来れなかったけど、私が来たかったからこのお店に来たんです。笑


 

オレ
そうか


 

俺は内心驚いていた。

 

その女が口にしたのは、まるで俺がさっきまで焼き鳥にくだを巻いていた話の答えのようではないか、と思ったからだ。

 

自分の人生に悩み、印刷機のように同じ毎日が作られていくことに絶望まではいかないにしても、焦燥感を感じていたのだが・・・よくよく考えらた、すべて、例外なく、俺自身が選んできたことではないか。

決して、お袋が俺にそうさせた、とか、女房がそうさせた、とかそういうモノじゃないはずだ。

自己の存在意義は自分で決めることができたはずなのに、どうして逃げるように生きてきたのだろう。

自分の価値を確立するということは、自分の可能性を信じて、誰がなんと言おうと信じ抜けば、それが強い力となって現実のものになるのではないか・・・。

そうじゃなきゃ、人類は空だって飛べなかっただろうし、この店にある電球だって存在しなかっただろう。

逃げて逃げて逃げてきたから、こうやって不本意な毎日とバーコード頭の風向きに諦めていたのかもしれないと気づかされた気がした。

人生の本当の意味とは、もしかしたら、諦めずに自分の信念を形にすること、貫くこと、行動することなのかもしれない。。

ああ、と俺は脱力するようにカウンターに突っ伏した。

隣のノリコは何か話しかけてきたようだが、一瞬だけでもいいから自分の世界に入りたかった。

 

オレ
自分の人生、ここでリセットしよう。・・・もう一度、挑戦してみよう。。。


 

遠くから声が聞こえてきた。

 

 

「・・・さん、お客さん、電車の時間は大丈夫?いつも遠いところから来てくれてるよね?」

 

 

ハッと体を起こすと店のオヤジが心配そうに、俺の体をゆすぶっていた。

店には俺以外、もう客は誰もいなかった。ノリコもいなかったし、目の前にあったはずの手付かずの焼き鳥も消えていた。

 

ふと左腕を見遣ると、25歳の時に奮発して買ったロレックスは24時13分を指していた。

1分程前に、博多駅発の小倉行き最終列車はすでにホームを出発したのを知った。

 

俺は今、最終列車を逃したかもしれないが、人生の列車はまだいつでも乗り換えることができるぜ。

なんだか力が湧いてきた。

 

まとめという名のあとがき

  • ショートショートのような、ある男の不思議な体験を最後までお読みいただきありがとうございます
  • 男の人が自己確立するというのは、サラリーマンとして長年組織の駒として働いていると難しいこともあるかもしれません。でも、「あきらめたらそこで試合終了ですよ」の安西先生の言葉(by スラ〇ダンク)のように、可能性はいつの瞬間も存在していると思います。
  • 突然「俺」の目の前に現れたノリコさんは、いったい誰だったのでしょう。それは筆者にもわかりません。笑
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